青汁とは


青汁とは

❖ 「青汁」は、緑葉植物の葉を絞った汁のことを言います。食事で不足しがちなビタミン・ミネラルなどを効率よく摂取するために、緑葉を生のまま絞り汁にして飲用するものです。 

❖ 「青汁」という語は、緑葉食・青汁の普及啓発に取り組んだ遠藤仁郎氏の妻ヒナ子氏が、昭和18年頃、遠藤氏がつくった緑葉ジュースを「青汁(あおしる)」と呼んでいたのが次第に広まり、「青汁(あおじる)」と転じて定着したいわれています。 日本では古来から緑色のことを「青」と表現しており(例;青田、青梅、青葉など)、緑の葉もの野菜は「青物」と呼ばれることから、「青汁」と呼び始めたものです。

❖ 緑葉を顆粒や粉末状に加工したものは、緑葉の「汁」ではないので、本来の青汁とは異なります。

❖ 青汁を飲む目的は、緑葉に含まれる優れた栄養成分を出来るだけそのままの形で取り出して、効率よく体内に取り込むことです。食事で不足しがちなビタミン・ミネラルなどの栄養成分を、それらを多く含む緑葉・野菜から効率よく摂取して不足を補い、1日に必要な全ての栄養を確保しようとするものです。


青汁を飲む目的

❖ 生野菜で1日に必要な栄養量を摂取しようとすると、嵩が多くなって充分な量を食べられません。加熱調理をすると嵩が減りますが、ビタミンなどの栄養成分は減ってしまいますから、さらに多くの量をとらなければならなくなります。ジュースにすれば、たくさんの量を比較的容易に摂ることができます。

❖ 青汁は、ある特定の効能を持つ特別な飲み物ではなく、野菜を効率よく摂るための手段です。ですから、食事の一部と考えた方が自然です。

❖ ビタミンや酵素などは、熱や光、酸化にとても弱く、なるべく熱などを加えない方法で栄養成分を取り出して、時間が経たないうちに飲む必要があります。そうすることで、緑葉の中にあった時とほぼ同じものを、短時間で大量に摂取することが出来ます。緑葉・野菜を絞った汁を、出来るだけ加工・加熱などの処理をせずそのまま飲むことに意味があります。


栄養・食生活の改善

❖ 人間の体は、食品から取り込んだ栄養素をもとにして、必要な物質の合成や、エネルギーへの変換、不要な成分の分解・排泄を行うことで、生命を維持しています。こうした仕組みは、多種類の栄養が組み合わされることによって、効率よく働きます。 

❖ 栄養素は、現在知られているだけでも約50種類あり、未だ解明されていない成分も多数あると考えられています。栄養素は、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン・ミネラル(五大栄養素)に分類されますが、健康を維持するためには、それらを過不足のないように、バランスよく摂る必要があります。

❖ 現代の日本では、様々な食品が豊富にあり、いつでも好きなものを食べることができます。しかし、忙しい生活の中にあって、不規則な食事や外食・加工食品中心の食事、偏食、運動不足などが重なることで、栄養の偏りや肥満・痩せなどの問題も生じています

❖高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、一部のがん、糖尿病、骨粗鬆症などのいわゆる生活習慣病は、栄養の偏りや食生活のあり方などと深く関連しています。そのため、健康の維持・増進を図るためには、こうした食生活を見直して改善していく必要があります。


栄養素の働き

❖ 人間の体は、食品から取り込んだ栄養成分をもとにして、必要な物質の合成やエネルギーへの変換、不要な成分の分解・排泄を行うことで、生命を維持しています。こうした仕組みは、多種類の栄養素が組み合わされることによって、効率よく働きます。一つの栄養素はそれだけでは十分機能せず、他の栄養素の働きが必要です。サプリメントなどで一つの栄養素を摂っても、食品から摂る場合より吸収・利用がされにくい場合があります。

❖ 栄養素は、その働きに着目すると、主にエネルギー源となるもの(炭水化物、脂質)、体をつくるもの(たんぱく質、脂質、ミネラル)、体の機能を助けるもの(ビタミン、ミネラル)に分けられます。これら三つの要素を、それぞれ過不足のないように必要量を取り入れることができる食事が、バランスが良いということができます。

❖ また、先に挙げた五大栄養素の他にも、体の調整機能を持つ成分があります。主に植物性食品などに含まれる色素や香り、アクなどの成分です。これらには、抗酸化作用や免疫力向上、体内浄化などの働きがあります。これらはフィトケミカル、またはファイトケミカルと呼ばれています。こうした成分を食品から上手に摂ることも、健康を維持・増進する上で大切です。

❖ 必要な栄養素をすべて含む食品というものはありません。食品ごとに含まれる栄養素もその量も違うので、いろいろな食品を組み合わせて多様な栄養素を過不足なく摂取する必要があります。

❖ 炭水化物などの糖質は、主にエネルギー源となります。米や小麦など主食として食べられる穀物類のほか、果物や砂糖などにも含まれます。余った糖質はグリコーゲンや中性脂肪に形を変えて体内に貯蔵されます。

❖ 脂質は、糖質やたんぱく質に比べて少量でも高カロリーが得られる効率の良いエネルギー源です。また、細胞膜の材料となるほか、血圧調整や免疫機能などの生理作用に関係する働きもあります。

❖ たんぱく質は、体内でアミノ酸に分解されて、筋肉や皮膚、毛髪、臓器、神経などの組織をつくる成分となります。また、酵素やホルモン、免疫物質などの合成にも関係しています。糖質が不足するとたんぱく質が分解され、エネルギーとして消費されてしまいます。

❖ ビタミンは、摂取した食べ物の成分を分解、合成、利用する過程で行われる化学反応を円滑にして、体内機能の正常な働きを助けます。ビタミンDやビタミンEなどの脂溶性ビタミンは、脂質とともに体内に貯蔵されますが、ビタミンCやビタミンB群などの水溶性ビタミンは使われないと排出されてしまうので、毎日こまめに摂る必要があります。

❖ ミネラルは、骨や歯などの体の構成成分になったり、体液の中で浸透圧の調整や神経情報の伝達に働いたりします。また、酵素や補酵素の成分となって体の機能を正常に保つ働きもします。ミネラルの不足は様々な機能障害を招き、骨粗鬆症や貧血、筋力低下などを生じさせますが、摂りすぎても障害をもたらすことがありますので、注意が必要です。

❖ 栄養素は、それぞれが複雑に関わり合って体の機能を維持する働きをしています。食事内容が偏っていると、摂取した栄養素が十分働かなかったり、余った栄養素が蓄積されて肥満になったりします。そして、そうした状態が続くと、やがては生活習慣病を招く恐れがあります。健康を維持・増進するためには、栄養のバランスを考えて、適量を規則正しく摂ることが大切です。


不足しがちな栄養素

<国民健康・栄養調査の結果>

❖ 国民健康・栄養調査は、国民の身体状況や栄養の摂取量、生活習慣の状況を調査したもので、厚生労働省により毎年行われています。

❖ 平成26年の調査結果は、概ね次の通りです。

❖ BMI(肥満度を表す指数)が肥満に当てはまる人は、男性は28.7%、女性は21.3%です。特に男性の50歳代は34.4%と高くなっています。逆にやせに当てはまるのは女性に多く、特に20歳代では約17.4%が当てはまります。これらは、エネルギーの摂取量と消費量のバランスが悪いことによるものと考えられています。

❖ 糖尿病が疑われる人の割合は、男性が15.5%、女性が9.8%で、年齢が増すほど割合が多くなります。70歳以上における割合は、男性が22.3%、女性が17.0%で、それぞれもっとも高くなっています。

❖ 血圧は、収縮期(最高)血圧が140mmHg以上の割合は、男性が36.2%、女性が26.8%、ここ10年間で低下しています。

❖ 血清総コレステロールの平均値は、男性196.6mg/dL、女性207.2mg/dLで、10年間で変化がみられません。240mg/dL以上の人の割合は、男性10.8%、女性17.4%です。

❖ 野菜類の摂取量の平均値は292.3gで、男性は300.8g、女性は285.0gです。年齢別では、男女とも20歳代が最も少なく、男性237.1g、女性238.9gとなっています。

❖ ビタミン・ミネラルの中で不足しがちなのは、ビタミンA、ビタミンB1・B2・B6、ビタミンC、ビタミンE、カリウム、カルシウム、マグネシウム,亜鉛。女性はそれらに加えて、葉酸、鉄が挙げられます。大まかに言って、若い年代のほうが不足する量が多い傾向が伺えます。


青汁の材料

❖ 青汁は、普段の食事で不足するビタミン・ミネラル類を補うものですから、それらの栄養素がバランスよく、豊富に含まれているものが望まれます。それらのを多く含む食品は、緑の濃い植物の葉、野菜や野草、木の葉などです。

❖ こうした緑葉のうち、野草、木の葉などは古くから民間療法などで利用されるなど有用なものがありますが、毒性のあるものも少なくないので、植物に関する深い知識がない場合は、材料として使わない方が安全です。その点、野菜類で普段から食用としているものは比較的安心できます。

❖ 青汁の材料に適するものとして、

①年間を通して充分な量が入手できること、

②ビタミン・ミネラルの含有量が多く、バランスが良いこと、

③絞ったときに適度な水分量があること、

④飲み味が比較的良いこと、

⑤ 継続して大量に飲んでも無害であること、

などが挙げられます。

❖ 出来れば地場の新鮮なもので、有機栽培、無農薬のものが望まれます。特に、普段の食事で不足しがちなビタミンA(βカロテン)、ビタミンB1・B2・B6、ビタミンC、ビタミンE、葉酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などをバランスよく含んでいるものを材料とすれば、効率的よく栄養の補給ができます。

❖ 栄養的に優れているものは、ケール、蕪の葉、紫蘇、小松菜、からしな、葉大根、ブロッコリーなどです。毎日飲むものですから、栄養的に優れているだけではなく大量に飲んでも安全で、味も比較的飲みやすいものが適しています。そうしたことから、材料としてはケールが最も優れています。


作り方

❖ 家庭でつくる場合は、すり鉢、ミキサー、ジューサー、ミンサーなどを利用します。

❖ すり鉢を利用する場合は、緑葉をすり鉢でつぶしてから濾し布で絞って汁をとります。

❖ ミキサーの場合は、緑葉を刻んで入れたのち、水を加えてブレードを回転させます。この場合は、汁を絞るのではなくカッターの刃で緑葉を裁断するものです。

❖ ジューサーは、最近では青汁専用のものが市販されています。野菜を投入すると汁と搾りかすが分かれて出てくるのがあります。2本のギアで押し絞るもの、スクリューですり潰しながら絞るものなどがあり、低速回転で成分を壊さないような構造となっています。

❖ ミンサーの場合は、緑葉をミンサーでペースト状にした後、濾し布や圧搾機で汁を絞り出します。

※市販されているジューサー、ミキサー、ミンサーなどは、メーカーが示す操作法・注意事項等に従って適切に取り扱ってください。


商品としての青汁

❖商品としての青汁には、①飲食店等の店舗で提供されるもの、②瓶詰にされたもの、③冷凍されたもの、④顆粒・粉末状に加工されたもの,があります。

❖①は、店舗で生野菜をジュースにして提供するものです。多くはジュース・スタンドの形式をとっています。スタンド形式で歴史のあるものは「遠藤青汁友の会」の青汁スタンドで、ケールの生葉をミンチでつぶして圧搾機で絞った青汁をその場で提供しています。その他、デパートなどのジューススタンドで、ミキサーを使った野菜ジュースを提供するところもあります。

❖②は、遠藤青汁友の会で製造する「遠藤青汁」でケールの絞り汁を瓶詰にしたものを、主に宅配によって提供しています。

❖③は、青汁を塩化ビニールなどの袋に詰めて冷凍したものです。全国のスーパー、コンビニ,薬局、通信販売などで買うことが出来ます。

❖④は、原材料の野菜などを顆粒や粉末状にして袋詰めしたものです。全国のスーパー、コンビニ、薬局、通信販売などで買うことが出来ます。しかし、商品として提供される形態は顆粒や粉末であり、汁(液体)ではないので、厳密な意味では青汁とは言えません。


青汁の歴史

❖ 植物の葉や根などをすり潰してその絞り汁を飲むことは、 病気や健康の回復を図るためとして古来から行われていました。例えば、中国が起源の本草学やインドにおけるアーユルヴェーダ、ヨーロッパでのハーブの利用などです。アメリカ大陸などでも植物の利用は行われていました。

❖ 日本でも、古来からの伝承による民間療法や民間薬として広く利用されてきました。植物を乾燥させて粉にしたり、煎じたり、汁を飲んだ入り、いろいろな形で体に取り入れることの一つの方法として、絞り汁を飲むということも行われていました。

❖ 植物の絞り汁を飲むということを、はっきりとした目的と方法論で取り組んだのは、遠藤仁郎氏(医学博士。1900−1997)だと言われています。

❖ 昭和18年(1943)頃、 食料事情が悪かった当時、遠藤氏は身近に何か栄養分に優れた食べ物はないか探していたところ、野菜や植物などの緑の濃い葉が栄養的に優れていることに気づきました。また、勤務先の病院や軍隊での体験により青汁の効果を確信した遠藤氏は、緑葉食と青汁の研究および普及啓発を自らの使命と考え、 終戦後は一層熱心に取り組みました。

❖ 戦後、国民経済が豊かさを取り戻して高度成長期を迎える頃には、食生活の欧米化や加工食品の増加が社会でも進み、国民が食事から摂取する栄養に偏りが生ずることとなりました。そうした中で、遠藤氏が取り組んだ青汁療法は体験者の口づてで評判となり、次第に支持者が増えました。

❖ 遠藤氏は、協力者らとともに材料と製法の開発を進めて、栄養面で優れた野菜ケールを材料として動力ミンチと圧搾機を用いて瓶詰青汁を製造する方法を確立しました。これにより、年間を通じて安心安全な青汁を提供することが出来るようになりました。

❖ 昭和29年(1954)には、緑葉食・生緑葉汁の普及を目的する青汁愛飲者の会「遠藤青汁普及会」が岡山県倉敷市に設立されました。また、倉敷市では小学校での青汁給食も行われました。

❖ 昭和36年(1961)には、主婦の友社から遠藤氏の著書「青汁の効用」が刊行され、一部の知識人などに注目されたのがきっかけになって全国的な青汁ブームを引き起こしました。

❖ 青汁の人気が広まると、多くの事業者が青汁という名称を使った商品をつくって販売を始めました。そうしたものの中には、緑葉を粉末状に加工して糖分などを加えたものや、絞り汁を加熱殺菌して冷凍にしたものなどが少なくなく、生の緑葉の絞り汁そのまま飲むという青汁本来の意義は見失われていると思われます。

❖ 平成2年(1990)には、男性俳優が「まずい、もう一杯」と言いながら青汁を飲むテレビコマーシャルが話題となり、青汁の知名度が一層高まりました。

❖ 平成8年(1996)フジテレビ系列で放送された「笑っていいとも!増刊号」で、罰ゲームとして青汁を飲むというコーナーが話題になり、宴会等の余興で罰ゲームとして青汁を飲むことが流行りました。

❖ 平成になって以降、多くの企業・事業者が様々な野菜や緑葉を用いて多種多様な青汁を商品化しました。そのほとんどは粉末又は冷凍の青汁で、スーパーやドラッグストア、食品店、通信販売などで購入することができます。一方、遠藤氏の指導に基づいて製造された本来の青汁は、遠藤青汁友の会会員である事業者が提供しています。また、同会会員が経営する青汁スタンドでは、ケールの生葉を絞った生の青汁を飲むことができます。